ネタバレ!(復活編) −ヒラガ・ゲン9さん ネタバレ!(復活編) 何がどうなったのか覚えていない。かすかに記憶にあるのは、車に乗せられてどこかに連れて行かれたことだ。僕はその間、ぼんやりとした意識の中でもがいていたのだった。思い通りにさせるものか。殺されてたまるか。 そうは思っても、体が動かなかった。どうしよう、どうしよう。そんなあせりから逃れられなかった。が、ふと思い出した。頭の中だけでどうにかできないものか。思いを実現できないものか。人間の力を信じてみよう。可能性がないわけじゃない。念だ。念能力を呼び起こすんだ。そう、あれを使える。腕をつかまれた時に見たあの光景。だけど…僕はあのとき誓ってしまった。心を売ることを。 悪魔は言ったのだった。自分の物理力は発揮できない。だが他人に思いを伝えることができる。どんなに離れていても。文字にしてはっきりと。さあ、選ぶがいい。その手段を。手紙か。それとも別の方法か。 僕はその時思いついた。ネットだ。ネットのページに書いて、世界中の人に見てもらう。僕の考え、思い、何を見たか、何をされているか、何を伝えようとしているのか。 "悪魔の自動書記(デビル・レター)"。考えていることをネットの掲示板に書き込むことができる。初期駆動の条件は、対象者をすぐ近くで見る。もしくは見たことがある。その誰かに触れるか、その記憶を持つ。そしてあとでそれを思い起こす。こんな単純なものだ。発動は、そうしたいと僕が思った時。どんなリスクでも背負う。だから僕は決めたんだ。心を悪魔に売ってもいい。クリュー、そうだっただろう? "気がついたの。" ふと女の子の声が聞こえた。どこなんだろう、ここは。僕はベッドに寝かされているようだ。照明のついた天井。壁は白く、時計や絵がかけられている。横には、ピアノ…そしてバイオリン。 "もう終わったよ。あなたは自由。" 何のことかまるでわからない。 "ここは…" "私のマンション。大丈夫。まだ誰も帰ってこないから。" ぼんやりとしていた周囲が次第にはっきりと見えてくる。どう見ても、女の子、といっても子供じゃない。彼女は…高校生くらいだ。姿が、ちょっと猫のよう。顔立ちがそう思わせる。とても可愛い。 "君は…高校生?" "よくわかるね。" "僕は…つかまって…教来石という男に…" "男?ボクは女。ボクが教来石だよ。" "えっ。" ハン謎管理人が女。しかも高校生。なぜだ。どうなっているんだ。ここは…普通の世界とは違うのだろうか。 "冨樫義博と…奥さんは…" "ああ、あのこと。" 女の子…教来石宗春は話し始めた。 "最初は頼まれただけ。でもおもしろそうだった。ボクはピアノやってるけど、ほんとは芥川賞を目指してるんだ。文才はあるんだよ。で、ピアノはあんまり好きじゃないんだ。文章のほうが能力を発揮できる。でも両親がうるさくてね。音大に入らないといけないんだ。朝早く学校に行って、音楽室のピアノで練習。帰ってきてもずっとピアノ。でも大久留米さんにやってくれって言われて書き始めてやめられない。おもしろいんだ。考えるだけで書けちゃうんだ、ボクは。ネットのどんなページにだって。キミもそうだよね。クリューの力、もらったんでしょ。" ボーイッシュ。だけど普通の女子高生タイプ。教来石宗春は女子高生…不思議だ。でも道理で女子高生言葉のことを書いていたはずだ。コンビニのこと、物の略称、学校用語に詳しかった。 間違いない! "キミのクリューの力、見せて。" そう言われて僕は思い浮かべた。ネットのどこかのサーバを。暗い中から浮かんでくるものがある。そうだあれに書き込もう。ハン謎のページだ。でも目の前に… "いいよ、ボクのページに書き込んでも。どうせ誰も信じないから。" それでもいい。書き込んでやろう。すごい秘密を。最初から。 僕はストーリー投稿のページを見つけた。 書き込んでやる。信じてくれなくたって構わない。すべての秘密を。これこそ、これこそ… ネタバレだぁぁぁあああ。 世界均一化編へつづ…けたい… ヒラガ・ゲン9 |