![]() 白い月 はじめに目に入ったのはただ、いっそ空漠なまでに広がる闇と―――― 幼い自分をここに捨てた奴等は予想していなかっただろう。 俺は自分の名前、生年月日、今までどこに住んでいたかも覚えている。 けれど、 親の顔は覚えてはいなかった。 白く翳って曖昧なイメージしかない。 そう、あの月のように。 今更探す気なんて無い。 その親が捨てさせたのだとわかっていたから。 復讐?そんな事は考えた事も無い。 所詮血のつながりなどひどく脆いもの。 理由があって捨てたにしても、理由無くして捨てたにしろ、 あれらにとって自分は不要で、 しかしそれは自分にとっても同じ事。 俺は憎みも恨みもしない。 好きにやるさ。 時々自分が二人いるような錯覚を覚える。 全てを上から眺めるような傍観者じみて冷酷な自分と、 どこか感情が安定しない自分。 けれど俺という本質は同じ。 無関係な人間の思いなど塵芥に等しいと感じる自分は異常なのだろうか。 俺は一度全てを奪われ、ここにいた。 ゼロからの再生。 俺は俺から居場所を奪った者達から奪い返そう。 この世界から、社会から。 俺は憎みも恨みもしない。すでに関係のない者達だから。 この町から外の世界と俺とはあの日に途絶えた。 ただ、取り返したいという思いだけが俺の全て。 八城 |